Q 会社登記の社長個人の住所が非表示になるのですか?
■2024年10月1日から非表示にできますが、5つ注意点があります
現在、会社・法人の登記簿には、下記のように代表者個人の住所が記載されます。
※ただしDV被害者等は申出により非表示とすることが可能です。
これに対し、「会社社長のプライバシーが守られないではないか」との声が、以前よりかなり根強くありました。
こうした経済界の要請を受け、2024年10月1日から、希望者の申出により、登記簿の社長個人住所の非表示化をすることが可能になります。
ですが誤解も多いので、5つ挙げます。
1.社長住所の登記義務自体はなくならない
社長個人の住所が登記事項とされている以上、社長が自宅を引っ越しするたびに、変更登記をしなければなりません。
これについては、非表示制度が始まっても変わりません。
登記簿に載らないからといって、登記しなくて良いということにはならないのです。
2.対象は株式会社のみ
現在では新規設立の会社の4分の1が合同会社となりっています。
しかし今回の非表示化制度の対象は株式会社のみ。
合同会社や一般社団法人等は対象外です。
3.BOリスト等の提出が必要
BOリスト(実質的支配者リスト)とは、 株主等、会社を実質的に支配している人が誰なのかを証明した書類です。
詳しくは法務省のホームページをご覧ください。
出典:法務省ホームページより
他に必要な書面は次の通りです(詳しくは法務省ホームページ)。
(1)株式会社が受取⼈として記載された書⾯がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書⾯等
(2)代表取締役等の⽒名及び住所が記載されている市町村⻑等による証明書(例:住⺠票の写しなど)
(3)株式会社の実質的⽀配者の本⼈特定事項を証する書⾯(例:資格者代理⼈の法令に基づく確認の結果を記載した書⾯など)
4.他の登記のついででなければ申出できない
社長住所の非表示化のみを申出することはできません。
他の登記※と併せて申出する必要があります。
※役員変更、目的変更、本店移転等
5.非表示になるのは一部
例えば住所が「札幌市中央区南六十条西一丁目1番1号」の場合、このように「札幌市中央区」までは表示されます。
■融資等において不利になる場合も
住所非表示のメリットは、何と言っても社長のプライバシーが守られる点です。
特に女性起業家にとっては、安心して会社設立ができることになるかもしれません。
では逆に、デメリットはないのでしょうか?
想定されるのは、融資等が不利になる点です。
実際、東京商工リサーチさんが実施したアンケートで、金融・保険業者が住所の非公開により、「与信管理がしにくくなる」との回答が5割超(51.2%)あったという結果が出ています。
商業登記規則の省令改正問題、与信態度が硬化も 金融・保険業の5割超が「与信管理がしにくくなる」と回答
(株式会社東京商工リサーチ・ホームページより)
こうした点を総合的に勘案し、社長として意思決定されることをお勧めします。