昔の借金110番:忘れていた借金の督促が今頃になって…
■サラ金は忘れた頃にやって来る
最近よくいただくご相談に、次のようなものがあります。
「5年以上も前に貸金業者からお金を借りましたが、その後督促がなく、自分でもすっかり忘れていました。
ところが最近になり、その貸金業者(またはその業者から債権を譲り受けた会社)から督促状が届きました。
どうしたらいいのでしょう?」
貸金業者が「昔の借金」を掘り起こして督促するケースが最近頻発しているようです。
これ自体は直ちに違法な行為と言えませんが、貸金業規制法の改正やいわゆる「過払い」で、すっかり売上が上がらなくなった貸金業者の苦し紛れの策のように見受けられる、というのが個人的な感想です。
このような場合、どのように対処したらいいのでしょうか?
■「あわてて電話」「放置」はNG!
まず絶対にやってはいけないことを2つ言います。
1.督促状に書かれた番号に自分で電話してしまうこと
これは「消滅時効の援用」ができなくなるおそれがあるからです
貸金業者の債権は、最後の返済から原則5年で消滅時効が完成します。
しかし「5年経ったから自動的に債務が消滅する」というものではなく、「もうこれは時効ですので、援用します」という意思表示を相手にして、初めて債務がなくなるのです。
ところがその一方で、このような判例もあります。
時効が完成したことに気づかなかったとしても、「確かに借りましたが…」「分割で返します」など、債務があることを前提とした言動をした場合、後から「やっぱりこれは時効だ」と援用することは認められない(最大判昭41.4.20。一般の方向けに言い換え)
つまりあわてて自分で電話をし、うっかり上記のような発言をしてしまうと、もう時効援用はできない、ということになります(相手もプロですから、録音されている可能性もあります)。
「言質(げんち)を取られる」とはまさにこのこと。
なのでこのように時効が完成している可能性がある場合、「電話は一切せず、内容証明郵便で淡々と時効援用を通知する」のが正しい対応なのです。
※ただし時効になってるにもかかわらず、いきなり家に押しかけ「1000円だけでも払ってもらえば今日は帰ります」等で時効の利益放棄を誘導するような悪質な方法だと、時効を認める判例もあります(大阪高裁平成27年3月6日判決)。
2.放置すること
これもお勧めしません。
上でも述べたように、時効援用の通知が相手に届いて初めて債務が消えるからです。
債務が消えていない以上、相手が訴訟を起こすおそれは否定できません。
■時効援用ができないケースも…
では5年以上経っていれば、どんな場合でも消滅時効が完成しているのでしょうか?
残念ながらできないケースもあります。
例えば次のような場合です。
1.裁判等を起こされている
裁判や裁判上の和解、支払督促※を起こして勝った場合、債権者は「債務名義」※と呼ばれるものを得ます。
これを得ると、時効はそこから10年延長されてしまいます。
特に支払督促は注意が必要です。
簡易裁判所から圧着はがきで届くため、ダイレクトメールなどと間違えて捨ててしまい、債務名義を取られている認識すらないこともあるようです。
※支払督促=簡易裁判所の手続による一方的で非常に簡単な裁判のようなものとお考えください
※債務名義=公的に勝った証拠、くらいにお考えください
2.最後の返済から現在までの間に、「債務承認書」や「分割弁済和解書」などに署名した
これらの行為(債務の承認)を行うと、時効完成のためにはそこからさらに5年の経過が必要になります(時効の更新)。
■「昔の借金」でお困りの場合は、当事務所へ
このように「昔の借金」問題は、思ったより複雑な問題が絡み合います。
督促状が届いたらすぐに当事務所にご相談ください。
費用の目安(税抜)
任意整理(時効援用含む)
報酬 2万0000円~
内容証明郵便 1510円~